Vol.17 favorite Shop
flowerが純粋に「面白い!」と思うショップを様々な形で紹介。
6月20日から『Aquvii(アクビ)』のポップアップショップが『flower 堀江店』にて開催。今回は普段から仲の良い『Aquvii』代表の川辺恭造さんと、〈flower〉プレスの宮川美穂の対談をお届けします。
――まず、お二人の出会いについて教えてください。
『Aquvii』オーナー川辺恭造さん:昔、『Aquvii』のポップアップショップを名古屋の『flower』でやった時に、せっかくだからその夜クラブを借りて、原宿の古着屋『KINSELLA』も交えて合同イベントを開催しようということになったんです。宮川さんとは、みんなで同じ車に乗って名古屋に向かっている時に初めて話しました。僕以外、誰も喋らないから、車内を盛り上げないといけないじゃないですか。それで宮川さんを4時間も口説いていたのに、全然ダメだった(笑)。
〈flower〉プレス宮川さん(以下M):口説いていたことすら気付かなかったけど(笑)。個人的に、こんな強烈なキャラクターの方は初めてで、すごく面白いと思ったんです。
――今日は恭造さんをとことん掘り下げたいので、まずは生い立ちからお願いします。
K:それ、面白いかな(笑)。国立生まれ、国立育ちです。日本のゲットー出身。でも、一人っ子で何の不自由もなく育ちました。中高とテニスをやっていたんですが、運動神経が全然なくて、走るのもすごく遅いし、フォームもおかしい。つまり、センスがなかった。もちろん大会には出場したけれど、勝ったことはない。でもチーム内では“人柄で副部長”ね。チームが明るくなるから(笑)。
――恭造さんって、勉強熱心なお子さんでしたか?
K:要領は良い子だったから、「おれ、全然勉強してないわ」とか言いながら、点数は良いっていう嫌なタイプ。大学は中退だけどね。僕は獣医学科に通っていたんですが、1年の最後にはもう自分でお店をやりたいと思っていた。親には「とりあえずもう1年やってみろ」と言われたけど、やっぱりダメだったね。あとは、要領だけでやってきたから、基礎が全くなくて、途中から授業の内容が全然分からなくなっちゃったんです。
――獣医学部は入るのも大変なのに、勿体無いと思わなかったんですか。
K:全く。その時から雑貨のお店をやりたいと思っていたし。僕が通っていた高校はほとんど男子しかいなかったから、モテるために必至で、「雑貨見に行こうよ」と誘ったら女の子が大体ついてきてくれるから、「細かいものを持っているといいらしい」と(笑)。当時は『文化屋雑貨店』とか、『SWIMMER』とか、もちろん『flower』にも足を運んでいた。辞めた後、下北沢の和家具屋にアルバイトで入って、その次に中目黒の個人系セレクトショップで働いてました。ユーロリーバイスとか、ヨーロッパのスニーカーとか、オリジナルとかを取り扱っているお洒落なお店だった。僕がファッションに関わったのはそこが初めてだったんですよ。
N:そういうお店に立っている恭造さんが想像できないです。
K:しかも、そのお店では店長とプレスをやっていたからね。5年勤めて辞めた後は適当な派遣仕事をしながらお金をためて、10ヶ月くらいバックパッカーをやった。その間にお店のイメージを考えていました。
M:具体的に言うと……
K:“ギフトショップ”ですね。それで、取り扱うなら大量生産の既成品じゃなく、もらって嬉しい一点物のヴィンテージやアートのほうがいいと思って。ただ、もし『Aquvii』の中に相応しいものがなければ、「あそこに良さそうなものがあるよ」っていうスタッフとの会話から何か見つかればいいと思っているから、そういう広い意味で“ギフトショップ”になればいいなと。下らないものとか、もはや自分で必要かどうか分からないものを買ってワクワクできるのが、このお店のいい所だと思っています。
――宮川さんから恭造さんへの質問があるそうです。
M:私からは恭造さんの性格のことを聞きたくて。恭造さんって、全然考えていない風に見せて、すごく気を遣える人なんじゃないかと。あと、女の子が好きなのかなって(笑)。
K:ちょっとね。いや、けっこう好きだな(笑)。そのために“気を遣える”っていうのはすごく大事ですよ。名前だけでも覚えて帰ってもらおうっていう(笑)。
――逆に、宮川さんにはどういう印象を抱きましたか?
K:かわいいな〜って。
M:それを言われて励まされています(笑)。
K:嘘つかなさそうだよね。可愛い子って、笑顔で話していても裏で何を考えているか分からない人が多いじゃない。宮川さんは“普通にいい子”で安心しました。
――恭造さん、休日は何をして過ごすんですか?
K:集団生活は苦手で、1人の方が好き。日曜日はずっと寝ながら「ちびまる子ちゃん」を観てる(笑)。できれば家から一歩も出たくない。朝が苦手だからお店の名前が『Aquvii(アクビ)』なんですよ。個人的には、海外での買い付けですら“イン”のイメージ。だって、黙々と作業するだけだから。
――買い付けの際に、個人的に好きでついつい買ってしまうものは?
K:“顔がいいもの”。ぬいぐるみは元々好きなんですけど、顔がいい奴と嫌な奴がいるんです。でも、不細工でも「どうしたお前、仕方ないから家に来るか?」って連れて帰ってくるのもありますよ。
――『Aquvii』は今年10周年ですね。長かったですか?
K:長かったかな。始めた時は5年で潰れると思っていたし。語弊があるかもしれないけれど、本当に頭の良い人はお店なんかやらないと思う。最初に描いた青写真通りにいくことなんかほとんどなくて、合理的じゃないことが多すぎるから。続ける秘訣なんてあってないようなものだし。
――モチベーションを高めるためにしていることは?
K:ブルーノ・マーズの「Uptown Funk」を聴く(笑)。実は僕の髪型、ブルーノ・マーズを意識しているんですよ(注:帽子を被っていて分からない……!)。
――『Aquvii』に何かルールみたいなものはあるんですか?
K:うん、4つ決まりがあって。それは“テンションは自分自身で上げること”、“集中すること”、“お客様を楽しませること”、そして“自分が楽しむこと”。
M:これ、flowerでも使いたい!
K:散々ふざけた割に、けっこうまともな締め方をしたでしょ(笑)。
アクビ│東欧から仕入れたアンティークを中心に、国内のアート作品、ZINEなども取り扱う“おもちゃ箱”的ショップ。中はティム・バートンの映画に登場しそうな雰囲気だが、スタッフさんはみんな気さくに何でも教えてくれる。
・Aquvii(代官山店)
◯東京都渋谷区代官山町2-5 ☎03-3462-5044 12:00~20:00 無休
・Aquvii TOKYO(渋谷店)
◯東京都渋谷区神宮前6-19-16第三宇都宮ビル#101 ☎03-6427-1219 12:00~20:00 無休
NEWS
7月20日(月)には、御徒町に3店舗目となる「AquviiAATshop」がオープン。こちらは日本に“ローブロウアート”を広めたパイオニア的ギャラリー「mograg gallery」内の店舗です。
◯台東区元浅草1-5-1
(長畑宏明)