Vol.7 “ Shiggy Jr. × flower “
トーフビーツやceroなど10年代シティ・ポップの文脈と、J-POPの下世話なキャッチーさとのミックス具合が病みつきになる新星Shiggy Jr.(シギージュニア)。しかし、その音楽はそんな解説さえも放棄したくなるほどの、あっけらかんとしたポップネスに満ちあふれています。モナレコードのオーディションでグランプリを獲ったことがきっかけであれよあれよとCDデビューに至った彼女たちですが、そのポテンシャルはライブハウスの規模に収まりません。
そんなShiggy Jr.のヴォーカル、池田智子さんは高校生の頃からflowerの大ファン。今回はプレス宮川のアドバイスを受けながら、flower原宿店で実際にお買い物をしてもらいました。今回のそのお買い物の様子と、バンドについてのインタビュー、さらには8月29日にタワーレコード渋谷にて開催されたインストアライブのフォトレポートまで、盛り沢山でお送りいたします。早速どうぞ!
――まず、池田さんがflowerを知ったきっかけを教えてください。
池田さん(I): flowerのスタッフさんの格好をスナップサイトで見ていて、いつも可愛いなって思っていました。だけど、ずっと富山の田舎に住んでいたので、自分の洋服を選ぶのが苦手で・・・いま上京して7年なんですけど、まだ模索中なんですよ。
――音楽とファッションだと、ずっと音楽のほうが好きだったんですか?
I:お洋服には苦手意識があるんです。ただ、スタイリストの甲斐さんにステージ衣装を選んでもらうときは、すごくテンションが上がるんですよ。だから、今度は宮川さんにファッションをプロデュースしてもらえたらいいなーって妄想しています!(笑)。
――池田さんご自身のファッションとShiggy Jr.の音楽ってリンクしていますか?
I:普段もステージ上もスニーカーが多いです。だから、気取らないポップな音楽とファッションのカジュアルさはリンクしているかもしれないって、いま思いました!(笑)
――音楽はもともとポップにしようと決めていたんですか? 池田さんの音楽的なルーツについてもお聞きしたいです。
I:ギターの原田くんが書く曲が自然とポップになるんですよね。私もポップなものが元々好きなので、特に狙ってポップにしている感覚はないです。ルーツかあ・・・自分で選んで聴き始めたのはゴイステとか銀杏ボーイズですね。高校生のころ好きだった先輩が聴いていて。あれ、こういうの嘘っぽいですか?(笑)
――ま、まあ・・・(笑)
――チャットモンチーの登場はたしかに衝撃的でしたね。チャットモンチーのどこに魅力を感じます?
I:えっちゃんの声と、3人(現在はメンバー脱退・加入を経て4人)なのに楽曲に幅があるところ。歌詞も好きだし。自分たちのやりたいところを貫いている強さも、格好良いなって思います。
――なるほど。では、Shiggy Jr.が歌詞のなかでリプレゼントしたいことは?
I:自分が言いたいことではなくて、原田くんが書く歌詞のなかの主人公になりきろうと思っています。その曲の主人公が何歳くらいなのか、どういうものが好きなのか、自分なりに役作りしてからスタジオに入ります。歌う前に原田くんとも話して、よりイメージをはっきりさせたりもしますね。例えば「oyasumi」っていう曲は、Shiggy Jr.の曲のなかで一番ダメダメな主人公なので、すごく感情移入できたんですよ(笑)。
――あと、池田さんのiPhoneのカバーって、岡村ちゃんなんですね
I:ずっと前から存在は知っていたんですけど、最初はどう受け止めていいのか分からなくて、笑ってもいいのかな、でもなんかエロいし格好良いしどうしよう・・・みたいな。いつかこの格好良さが分かるはずだと思って聴き続けたら、ある日「これか!」って気付いたんです。アボカドとかコーヒーとかって、美味しさに気付いっちゃったらもうそれなしではいられなくなるじゃないですか。その感覚に似ている気がします。この例えで伝わるかなー・・・!(笑)
――Shiggy Jr.のサウンドのなかで一番意識しているところは?
I:最近だとメロのリズムです。ただ、自分で好きなものは感覚的に分かるんですけど、そのルーツがどこにあるのかはよくわからないんですよ。新作を作るときに、原田くんから一枚目よりリズムに重点を置いた曲があがってきたので、洋楽を聴いて歌い方を研究したりもしていました。あとは宇多田ヒカルとかCrystal KayのようなR&Bっぽいものも聴き直して練習しましたね。
――誰か特定のヴォーカリストに憧れたことはありますか?
I:YUKIですね。けっこう前に銀杏ボーイズとYUKIのジョイントツアーを観に行ったんです。まだ大学の軽音部で遊んでいて、自分がプロになるなんて思ってもみなかったときに、YUKIの歌を生で聴いて、すごいと思う反面悔しいと思っている自分に気付いて、そのときはなんでそんな偉大な人に対して自分が悔しさを持つのか分からなかったんですけど。でも、いまになって思うのは、そのときから本気で歌うということに憧れる気持ちがあったんだと思います。バンドやるからにはそこまで目指したいということなんだろうな、と。自分で曲も書けないし、コピーバンドやってるだけで満足だったはずなんですけど。
――それでプロになることを志したんですね。
I:大学3年のとき、就職活動がまったくうまくいかなくて、わざわざ大学に残って次の年もやったんですけど、それでも一社も決まらなくて。めちゃくちゃ落ち込んで、部屋の片隅でうなだれていました(笑)。それで、何がダメなんだろうって突き詰めて考えたときに、ほんとうにやりたい音楽以外のことをやろうとするから本気になりきれないんだ、と思って、「やっぱり音楽をやろう!」とひそかに決めたんです。でも曲も書けないし、メンバーもいないので、どうしようかなと思っていたら、タイミング良く知り合いの女の子に原田くんを紹介してもらったんですよ。原田くんはちょうどヴォーカルを探していて、試しに声入れしてみたら雰囲気がぴったり合ったんです。そのあと、2013年にモナレコードのレーベルグランプリを獲ったことがきっかけで、CDを出せることになりました。
――部屋の片隅で落ち込んでいた頃から(笑)たった2年で環境が激変したんですね。ステージでは緊張するんですか?
I:本番前はすごく緊張するタイプです。人前に出ることがすごく苦手で。歌うことは好きなのに。最近はちょっとずつ克服できているのかもしれません。前はライブ一週間前からナーバスになっていました(笑)。
――直近の目標を教えてください。
I:武道館のステージには絶対立たなきゃ、と思っています。直近じゃないかもしれないけれど(笑)。
――同世代のバンドでシンパシーを感じるバンドっていますか?
I:SANABAGUNっていうヒップホップをやっているバンドがすごく格好良くて。お話したことはないんですけど、いつかツーマンとかやりたいなって。ドラムがすごいんです。たぶん同世代だと思います。あとはGOMESSさん(※10代のラッパー)っていう方とこの前Twitterでやり取りしたらShiggy Jr.のことを知ってくれていて。同世代で素敵な人がいっぱいいるのが嬉しいんです。これからたくさんそういう人たちと関わっていけたらいいなって思いますね。自分の声で色んなことができたらいいです。
――この世代ならではの軽やかな横移動というか、変に決めつけない感覚が良いと思います。
I:だから、たとえば次のアルバムがどうなるのかもまだわからないんですよ。その時々で選んでいるサウンドなので。
――これをきっかけにflower好きが聴いてくれると良いですよね。
I:私がアイドル好きだし、音源を発表する場所がネット中心なので、いまはまだ男性ファンのほうが多いんです。今回のインタビューのようなことがきっかけになって、女性のファンも増えてくれると嬉しいですね。
3階の通路がびっしり埋まるほど満員だったタワーレコード渋谷でのインストアライブ。小学生から中高年まで幅広い層のファンたちが揃って同じフレーズを合唱しているのを目の当たりにして、改めてShiggy Jr.の音楽は“由緒正しきポップミュージック”なんだと実感しました。池田さんがインタビューの最後で話していたように、武道館をオーディエンスのジャンプで揺らす日もそう遠くないのかもしれません。
新作から「Listen to the Music」でスタートしたライブは、終始ハイテンションなパフォーマンスと憂いのあるメロディのコントラストが印象的で、ラスト「Saturday night to Sunday morning」で大団円を迎えたときには、そこにいた全員が思わず笑顔に。Shiggy Jr.は友達に「最高なバンドがいてね!」と言いたくなるバンド。もし彼女たちの曲が気に入ったら、迷わずライブに足を運ぶことをオススメします。だって「名残惜しくなるほど」楽しい時間が待っているから!
Shiggy Jr.
Vo…池田智子
G&Cho…原田茂幸
Ba&Cho…森夏彦
Dr…諸石和馬
2014.11.21(fri)@新代田FEVER
Shiggy Jr. presents『なんなんスかこれ。』
CD、ライブ情報はこちら→http://shiggyjr.com/