Vol.14 Tokyo Breakfast #3
「毎日の小確幸って、これのこと。」
ああ、『ベーカリーササ』で毎朝パンが買える笹塚の人たちが羨ましい……。見た目はシンプル、味は街のパン屋さんのレベルをはるかに凌駕していて、値段だけは街のパン屋さん。もし笹塚に住んでいたら、学校や会社に遅刻しそうでもつい甲州街道沿いのお店に足が向いてしまうと思う。美味しいお店が多くて、都心からのアクセスも良く、“実は住みやすい”笹塚。あと2、3年経てば雑誌がこぞって取り上げそうな予感のするこの街で、男性二人が切り盛りする『ベーカリーササ』は老若男女から愛されている。 |
宮川さん「ずっと独学でパンを勉強されていたんですか?」 オーナー福島さん「いえ、アルバイトとしてここに入る前までは飲食店を転々としていましたね。3年ぐらいは他の仕事と掛け持ちしながら下働きをして、前オーナーが新店舗を出す時に、このお店を僕が任される形になりました。それから改装を経て、僕なりのテイストをプラスして今の形に至ります。」 パンが好きでたまらなくて、自分のお店を出すことが夢だった、みたいなストーリーを予想していたけれど、そんなきっかけだったとは。福島さんと一緒に働く横山さんにも、パン屋さんのスタッフのイメージを覆すストリートな雰囲気がある。 |
横山さん「僕は洋服の専門学校に通っていたんですが、しばらくして洋服にお金を使うことが嫌になってきて(笑)。最初の仕事はメッセンジャーですね。今でも休みの日に時々走っていますよ。1年前に福島と出会って、僕もこのお店に入ることになりました。」 |
『ベーカリーササ』のパンも自分の家まで運んでほしいな。なんて。ちなみに、ここはスタンド式でイートインスペースがない。 福島さん「中が狭いので、最初からイートインを作ることは考えていなかったのですが、実はいま近くにカフェを出そうと計画中なんです。」 |
何と! これは嬉しいニュース。休日にわざわざ笹塚まで足を運ぶ理由が増えそう。お二人はこの付近だとどこで遊んでいるんですか? 横山さん「『フォレストリミット』かな。僕たちはここで不定期のイベントをやっているんです。ノイズ系のアングラバンドがよく出演するクラブとして知られていますが、僕たちがDJの時はオールジャンルかけていますよ。ちなみに、その日はここのバゲットを無料で配っています。『ベーカリーササ』の名前はあんまり表に出していないんだけど(笑)。」 |
知り合いのいないクラブイベントに繰り出すのは、やっぱり気が引ける。アングラ界隈では聖地とされている『フォレストリミット』にも、この2人が出演するなら勇気を出して行ってみようという気になった。 DJとメッセンジャーという、今っぽい別の肩書を持った2人だが、黙々とパンを焼き続ける背中にはきちんと“職人”の雰囲気を漂わせている。人の想いが込められたパンが食卓にあると、朝のテンションが2段階くらい上がるよね。 |
photo by hiroaki nagahata
ベーカリーササ |