Vol.5 “Interview” Mei Motonaga

第5回と第6回は、flowerの商品を支える“企画”と“バイヤー”のお二人に登場してもらいます。

自分が好きなブランドの企画とバイヤーはまさに憧れの職業。自分たちがデザインしたり、買い付けたアイテムが実際にお店に並ぶのですから、その責任は重大です。

まず今回は、若くしてflowerオリジナルアイテムの企画を担当する本永さんにインタビュー。

若干23歳にしてブランドの世界観を理解し、自分の個性を加えてデザインに落としこんでいるという彼女は、迷いのない口調でご自身の価値観と仕事について話してくれました。

また、2014AWのアイテムもあわせて紹介。

誰でも着やすいオーセンティックなアイテムがメインですが、サイドジッパーがついたスウェットや、ボンディング加工でハリ感を出したトップス、今っぽい要素がさり気なく取り入れられています。そのほかにも秋冬が待ち遠しくなる可愛いデザインが目白押し。早速どうぞ!

flowerデザイナー  本永 明

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――そもそも本永さんが洋服を好きになったきっかけは?

本永さん(M):ファッションっていうジャンルにこだわっていたわけではなくて、作ることに興味があったんです。

――なるほど。むかしからデザイナー気質だったんですね。学生のころ部活は何をやっていたんですか?

M:生物クラブ(笑)。水質調査とか。インドアな部活に思われがちなんですが、けっこうアウトドアなんですよ。わたしは釣りができると聞いてそこに入ったんです(笑)。

――そのあとは服飾の学校に?

M:文化服装学院に入りました。そのときは絵を描くことが趣味だったんですが、一人でする仕事ではなくて、大勢と一緒に何かを作り上げていく仕事が良いと思っていました。洋服の仕事に就けば自分もお洒落になれるし。

――大学では何を学ばれていたんですか?

M:洋服を作っていました。パターンから学んだので、基礎的なことはだいたい分かると思います。学校はすごく楽しかったですね。専門ははじめて自分にぴったりな環境だと思いました。私はけっこう真面目だったんで、課題をきっちりこなして、就職に繋げる、みたいな(笑)。一年のときから先生に「本当に頑張らないと厳しいよ」と言われていました。あと仲の良い二人が高校から洋服を学んでいた子なので、そのレベルの差に焦っていましたね。

―― ちゃらんぽらんな学生生活を過ごす人も少なくないと思いますが、本永さんはその頃から将来のことを考えていたんですね・・・ずっと真面目な学生だったんですか?

M:父が医師だったので、中学生のころはブラックジャックに憧れて頑張って勉強して、進学校に入りました。

だけど高校で見事に挫折しちゃって。だからこそ、大学では好きなことで努力したいと思うようになったんです。

――flowerを知ったきっかけは?

M:父が出張でflowerのサンダルをお土産に買ってきてくれて。

それがすごく可愛かったんです。わたしが中学2年生のころかな・・・あ、そういえば当時のデザイン画がありますよ!

 sandal

――このカタログめちゃくちゃ可愛いですね! 絵なんだ・・・お父さん、ナイスチョイスですね。

M:5つ上の姉もflowerが好きで、お下がりがほとんどflowerの洋服だったんです。私は当時プレスだった川島さんに憧れていました。

――新卒でflowerに入社したんですよね?

M:現実的にデザインを任せてもらえそうな会社を中心に受けていたんですが、わたし正直者なので「うちのブランド知ってる?」って訊かれて知らなかったから「知らないです」って答えていたんですよ。そしたらやっぱり最終で落とされて。

 「好きじゃないとやっていけないよ」って。で、もう半ば諦めて夏休みに地元に帰ってゆっくりしていたら、姉が「flowerが新卒募集してるよ」って教えてくれたんです。

 それでエントリーしました。でも、いきなりデザイナーは無理だと思っていて、お話だけでもできれば良いや、みたいな感じで。そこで社長とお会いしたときに「この人のために働きたい」と思えたんです。

――へー、社長は端的にいうとどういう方なんですか?

M:ははは~って笑いながら話してくれる自然体な方です。自然体なんだけどすごくオーラがある、みたいな。

――入社したあとは?

M:販売員として原宿店に立っていました。最初は接客が苦手すぎて・・・声掛けできなかったんです。

はじめて会った人に「これどうですか?」とか言えなかったんです。これは無理かもしれないと思いました。

――まあ、色んな人に話しかけるのが苦手でも、少数の人とすごく仲良くなるのがうまいスタッフさんもいますよね。

M:たしかに。わたしもすごく仲良くなって、いまでも時々連絡を取り合っているお客さまはいます。その方はいま看護師をされていて、flowerに通っていた頃はまだ学生だったんですが、「flowerに来るとやる気が出る」と言ってくれたんです。

――デザイナーになられて?

M:半年くらいですね。いまはデザインのラフを描いたらチーフにチェックしてもらいます。

 

 

――自分の色はどうやって出しているんですか?

M:色を選ぶときは肌馴染みが良いものを選びます

――自分の趣味もそんな感じですか?

M:わたしはハイブランドの洋服も好きなので、幅広いジャンルもチェックしています。

トム ブラウンとかブルックス ブラザーズとかが好きなんです。

シャツワンピがすごく好きで。トム ブラウンはタグもすごく可愛いし。キャッチーなので、受け入れられやすいじゃないですか。そういうところは自分のデザインでも大事にしたいです。アメリカントラッドが自分のデザインのベースにありますね。

――ブルックス ブラザーズは僕も大好きです。上品だし、ざっくり着られるし。ブルックスのシャツを着こなせる女性は格好良いですね。トラッドななかにも今っぽいエッセンスを取り入れるために意識していることはありますか?

M:Style.comでコレクションをチェックして、トレンド色を抜き出したりしています。テーマはそのあとに決めることが多いです。

――きちんと洋服を勉強してきた経験が生かされていますね。

M:ただ、自分が好きなものを主張し過ぎないようにしています。flowerのブランドイメージ、たとえばflowerのロゴにあるような可愛い雰囲気を大事にするとか。

あと、常にお客さんのことを考えていますね

――洋服以外に興味があることはありますか?

M:お外に出て遊びたい(笑)。最近旅行は行くようにしているんですが、元々集団が苦手で・・・

大人数の飲み会でワイワイするのもダメです。それだったらほんとうに仲の良い友人と時間を過ごしたい。でも、最近そういうの良くないなって思い始めました。

――バーとかで知らない人に話しかけてみましょうよ。まったく知らない人なら意外に気楽なもんですよ。

M:たしかに!知り合いだと気を遣っちゃうし。話すのが嫌いなわけじゃなくて、変なことに時間を使いたくない。でもそういう環境に放り込まれたら、人見知りだから、最初はお茶のラベルを見ていると思いますけど(笑)。

いま集中したいことが第一優先になってしまうんです。せっかちなのかな。

――笑。面白い人ですねー。たしかに顔に出そう。

M:だから、プレスの宮川さんとか、誰でもウェルカムなので羨ましいです。

――一番の親友はどんな方なんですか?

M:その子は地元の幼馴染で、とにかく一緒にいて楽しい。私の家に泊まりにくることも多くて、ほんとうに姉妹みたいです。育った環境もすごく似ていて。

いま、神戸で薬剤師の免許をとるために勉強しています。その子もflowerが大好きで。

この前沖縄に帰ったときに会ったら、わたしがはじめてデザインした洋服を着てくれていたんですよ!

――それは感動しますね〜。最後に、本永さんの夢について訊かせてください。

M:いまはまわりの意見を聞きながら仕事しているので、これからは自分の力でみんなが喜んでくれるアイテムを作りたいです。

――そういう観点で映画や音楽などを分析することもありますか?

M:ありますよ。今年の春夏のテーマが「AT POOL SIDE」だったんですけど、それはソフィア・コッポラの「Somewhere」に影響されています。

じつは学生のころからプールをテーマにして作品を発表していたんです。海だと野生っぽいイメージもありますが、プールだともうちょっと洗練されていて、都会なイメージがありますよね。

 

 

――お父さんと娘がプールのなかでじゃれ合うシーンですよね。ストロークスの「You Live Only Once」がBGMで。

M:エル・ファニングの格好も可愛いですよね。

――今シーズン(2014年秋冬)は?

M:「パリ、テキサス」のピンクのニットを着た女の子とか。そのまんまやるんじゃなくて、要素として落としこむんです。

そういう背景があると説得力がありますね。こういう話を知っていると、また違った感覚でflowerの洋服を見ることができると思います。本日はありがとうございました!

 

 

flowerデザイナー 本永 明

 文化服装学院を卒業後、入社。

flower原宿店で店舗スタッフとして勤務した後、デザイナーに就任。

 デザイナーブログ http://www.flower-blog.com/flower-design